建設水道委員会 視察研修所感

氏 名 神谷 昌宏

平成26年10月22日(水)〜24日(金)の3日間、建設水道委員会のメンバー7
名と当局2名の合計9名で行政視察に行って参りました。

視察項目は
  1. 東京都江戸川区 新しい街路樹デザインについて
  2. 群馬県前橋市 中心市街地活性化等によるまちづくりについて
  3. 静岡県浜松市 スマートインターチェンジについて
であります。
 普通、視察に行く場合は、視察先の項目について資料を準備しておくのですが、今回は視察先以外に、刈谷市において行っている同種の施策である「街路樹の植え替え・管理状況」「中心市街地活性化等によるまちづくり」「スマートインターチェンジ」に関する資料が約50ページに亘り作成されていました。資料を作成したのは市担当課ですが、委員長からの指示があったとのことです。当日は、刈谷市の施策と対比することが出来て、より密度の濃い視察をすることが出来ました。以下、視察地ごとに報告します。
  1. 東京都江戸川区 新しい街路樹デザインについて

  2.  江戸川区に到着して最初に感じたのは「街路樹の本数が多いなぁ〜」と言うことです。事実、江戸川区の街路樹は743路線に高木(3メートル以上)が約35000本植えられていました。刈谷市では104路線に高木約6100本、市の広さはどちらも約50K平方メートルと同じくらいですから、江戸川区は高木が刈谷市の約6倍植えられていることになります。管理運営予算も江戸川区では年間約5億9000万円に対して刈谷市では約1億円ですから、本数と予算額とは比例していることになります。これだけの本数の街路樹を良好に維持管理して行こうとすると計画的に事業を行ってゆく必要があります。そこで平成19年度、学識経験者、区民委員、行政委員の構成で「街路樹のあり方検討委員会」を開催し、これまで育成してきた街路の緑環境をより質の高いものにするために、今後の街路樹管理方針を策定しました。そして平成20年度、街路樹のあり方検討委員会の答申を基に、街路樹植栽の計画から維持管理、情報発信に至る区独自の運営方針をまとめ平成21年4月に街路樹管理の指針である『新しい街路樹デザイン』を作成しました。
     この指針は新規路線の街路樹はもとより、既に整備済みの街路樹の日々の管理や更新などの計画、実施に対応するものとして次のような5つの章からなっていました。

      第1章  街路樹の現況・諸元
      第2章  街路樹の計画、設計について
      第3章  街路樹の取り扱い、維持管理
      第4章  街路樹整備、維持管理に対する評価
      第5章  区民協働・情報発信

      第1章は、江戸川区の街路樹行政の歩みと、街路樹の現状をまとめたもの
      第2章は、街路という限られた植栽空間の中で、健全で、美しい街路樹景観を
      創り出すための植栽基準や樹種リストをまとめたもの。併せて、管理目標や目
      標樹形、植栽環境のあり方についても本章で取り上げ、計画段階から維持管理
      を意識し、継続可能な街路樹植栽を行う指針としてまとめたもの
      第3章は、植栽後の維持管理の方針をまとめた章であり、日常的に行う街路樹
      剪定、病害虫防除はもとより、街路樹に影響を与える道路工事に対する、街路
      樹の保護又は更新についての指針をまとめたもの
      第4章は、指針作成時点ではまだ実施されていない街路樹評価制度の必要性
      と、評価システムの草案をまとめたもの
      第5章は、今後街路樹行政に対する、区民協働の方向性と、広く街路樹を理解
      してもらうための情報発信の草案をまとめたもの、となっていました。

     この中で特に目を見張ったのは、[路線別目標樹形カード]の存在です。区内全路線(約500路線)の管理目標樹形及び管理方針を[路線別目標樹形カード]としてまとめられており、各路線は、原則このカードに従って管理を行うが、街並みの変化や道路工事等に伴い樹種の変更が行われる等、状況の変化により、管理内容の見直しを行い、その時々に即した維持管理を実施しているとのことでした。この[路線別目標樹形カード]には路線名称や歩道幅員、樹種などの諸元と、カード作成時の樹木の形状(樹高、枝張り)、維持管理上の課題、将来的な目標となる樹高、枝張り、樹形およびそれに向けた管理方針などが記載されていました。これにより、年度によるばらつきや、施行する造園業者によるばらつきを防ぐことが出来ると思います。
     また、当局の説明の中で強調していた事柄は「造園業者に対する評価制度の確立」という点です。業務遂行上の諸手続きや業務監理的な項目への評価項目以外に、街路樹の質の更なる向上を目指すために、剪定技術や品質管理に対する適正さの評価の必要性を強調されておられました。そのためには、先程紹介した[路線別目標樹形カード]を利用し、業務記録・剪定技術・目標樹形への達成度等を評価記録する「カルテ」を作成し、適正に管理技術を評価できる人材(街路樹剪定士指導員、樹木医等)と連携し、景観、環境向上の評価、植物生育サイクル、街路樹機能に応じた適正な管理技術等を評価することが求められているとのことでした。こうした取り組みにより、品質、技術の評価は 今後の管理受託者の技術の向上、人材育成につながり、街路樹の良好な生育と地域の環境、良好な景観形成が図れるのだと思います。  街路樹がある事により、私たちは精神的な安らぎや潤いを享受する事が出来ます。また、街並みに品格や風格を持たせ、地元への愛着心や誇りも生まれます。このように、街路樹には目に見える効果や目に見えない効果が備わっているのです。目に見える効果としては、視線誘導や美観の調和など「景観向上」の効果があり、目に見えない効果では、ヒートアイランドの抑制や大気浄化、生態系の保全など「環境・衛生の保全」と言った効果があります。一方、街路樹による苦情も多く寄せられることも事実です。「街路樹が伸びすぎたために自宅や道路が日陰になってしまう。看板等が見づらい」「害虫に悩まされる」「落ち葉がゴミとなって汚い」「根上がりによって道路が歩き辛い」など、市民の街路樹に対する価値観は千差万別ですから、「こちらの声を聞けば、180度違う立場でクレームが出る」といったこともよくあることです。そういった意味では、年度や市担当者・造園業者によるバラツキを無くし、しっかりとした方針と基準の下に街路樹整備と管理を進めて行く必要があるのではないかと思います。そのためのツールとして今回視察した江戸川区における街路樹管理の指針である『新しい街路樹デザイン』は非常に参考になると思います。
  3. 群馬県前橋市 中心市街地活性化によるまちづくりについて

  4.  中心市街地の空洞化は、全国の地方都市共通の課題となっていますが、今回視察した前橋市でも長期間にわたって、空き店舗の常態化や、中心商業地における商品販売額や歩行者通行量等の減少傾向が継続している状況です。平成12年3月に、前橋市としては最初の中心市街地活性化基本計画(旧計画)を策定して以降、計画に基づき各種活性化事業の推進を図ってきました。この間、平成16年12月から平成17年7月にかけて行った、「まちづくりにぎわい再生計画」による報告を受け、平成17年11月に旧計画を改訂し、新たな取り組みを進めてきましたが、残念ながら中心市街地の空洞化に歯止めが掛かっていないのが実状です。こうした傾向は全国的な課題であることから、国においても平成18年に、いわゆる「まちづくり三法」の改正を行い、コンパクトなまちづくりへの転換の促進等を図っています。
     こうした流れを受けて、それまでの活性化事業の成果等の評価及び検証を行ったうえで、中心市街地の現状や今後の方向性を踏まえた、実効性の高い「前橋市中心市街地活性化基本計画」を平成23年3月に策定しました。但し、中心市街地の空洞化には様々な要因があるため、短期間で中心市街地の再生を実現することは現実的には困難と考え、中長期的な視点を持ちながら、先ずは5ヵ年の計画期間の中で、着実な推進が見込まれる、具体的な事業を位置付け、取り組んで来られました。そしてこの度、計画策定から3年が経過し、中心市街地を取り巻く状況の変化により、一部、計画の見直しが必要となったことから、現行計画を改訂し、より実効性の高い事業を盛り込み、中心市街地再生に万全を期すことになったのです。
    具体的な展開とそのための具体的事業については次の通りです・・・

    展開1 中心市街地の利便性向上
      ・中心商店街共通カートの設置・運用
      ・案内標識や情報案内板等の改善・充実
      ・街なかレンタサイクルの充実、新たなシステムの導入検討
      ・マイバスの利便性向上に向けた取り組み
      ・空き店舗を活用した利便施設等の検討・設置
      ・ポイントカード事業等の見直し・再編
      ・市営駐車場等の利便性の向上

    展開2 通りの魅力づくり
      ・熱血店舗開店支援事業の見直し・改善
      ・街なか空き店舗情報の活用(HPでの情報発信、出店希望者に対する支援)
      ・福祉施策や文化施策等と連携した通りの魅力づくり
      ・商店街活性化アドバイザー等を活用したゾーニング計画の作成・実施

    展開3 街なか回遊性の向上
      ・前橋プラザ元気21利用者の街なか回遊に向けた取り組みの検討・実施
      ・前橋駅北口広場整備事業の実施
      ・前橋駅北口周辺〜中心市街地間の回遊性向上に向けた取り組みの検討・
       実施
      ・市有低未利用地(銀座イベント広場・中央イベント広場・もてなし広場)の
       活用方針の検討・実施
      ・街なかウォーキング、街なか観光の推進
      ・広瀬川河畔緑地再整備事業の実施

    展開4 にぎわい創出
      ・中心市街地の日常的なにぎわいづくりに向けた取り組みの検討・実施
      ・アーツ前橋整備による芸術文化事業の推進
      ・アート系ソフト事業の中心市街地での展開
      ・文化芸術イベント等の見直し、再編
      ・朝市や夜市等の検討・開催
      ・8番街区等を活用したソフト事業の推進

    展開5 情報発信力の強化
      ・まちなか情報マップなどの発行
      ・コミュニティFMの活用
      ・観光プロモーション等と連携した効果的な情報発信の検討・実施
      ・ICT技術の活用による新たな情報発信戦略の研究・具現化
      ・地域新聞の発行

    展開6 地域資源等の活用
      ・中心市街地の歴史・文化資源の再発見や再発掘
      ・既存事業や各種講座の再編による多彩な学習機会の提供
      ・既存施設(前橋文学館・前橋テルサ・元気21など)や空き店舗等を活用した
      「学びの場」の設置・運営

    展開7 居住性の向上
      ・二中地区(第一・第二)土地区画整理事業の継続的な推進
      ・千代田町三丁目土地区画整理事業の推進
      ・優良建築物等整備事業の推進
      ・市営住宅等、街なか住宅ストックの活用促進
      ・街なか居住を支援する福祉系ソフト事業の検討・実施
      ・街なか居住促進に向けた新たな支援制度の検討

    展開8 持続可能なまちづくり
      ・商店街の人材育成に向けた研修事業等の実施
      ・老舗等の後継者育成や店舗の継承・代替促進に係る支援制度の検討・創設
      ・中心市街地の地域コミュニティ再生に向けた取り組みの検討・実施
      ・市民活動支援センターの機能強化に向けた取り組みの推進等
      ・まちづくり会社の設立に向けた検討

    こうして、具体的な展開やそのための取り組みを見ていくと「中心市街地の活性化は、どこか特定の部や課だけで出来るものではなく、オール前橋市として全庁挙げた取り組みが必要である」といったことを感じました。
    今回の中心市街地活性化基本計画は国の認定は受けていない、いわば任意の計画であるとのことでした。国の認定を受ければ数々の補助金を受けることが出来る訳ですが、任意であればそれも期待出来ません。そうした中、中心市街地を取り巻く状況の変化により今回、3年間経過した時点で計画改訂を行っています。つまりそれだけ外部環境の変化が激しくて、当初の計画通りにことが運ばないことが多いことを意味しているのだと思いました。地元において「刈谷市のまちづくりは面での整備がなくて点での整備ばかりだ」「刈谷市も認定中心市街地活性化基本計画を策定してはどうか」といった声を時々頂くことがあります。しかし、今回の前橋市での事例を見た限りでは「国の補助金が受けやすくなる認定を受けたものであれば基本計画を策定しても意義があるかもしれないが、そうでなければ外部環境が流動的であるので、敢えて基本計画を策定する必要はないのではないか。上位計画である第7次総合計画や都市計画マスタープランに沿って、個別具体的な事業の積み重ねで良いのではないか」と感じました。

  5. 静岡県浜松市 スマートインターチェンジについて

  6.  先ごろ開催された刈谷市議会9月定例会において[都市交通計画調査推進事業]として2600万円の補正予算が計上されました。この予算の中には「刈谷ハイウェイオアシス周辺において、スマートインターチェンジの導入を検討する」ための予算も含まれています。また来年度の予算要望の中で私ども志誠会では「スマートインターチェンジの設置」を要望しています。そうした中、既に市内で一箇所のスマートインターチェンジが設置され、現在あと2箇所についても事業が進められている浜松市において設置の目的・メリット・事業までの行程・予算などについて勉強しました。
     浜松市では平成24年、新東名高速道路の開通に合わせて「新東名浜松SAスマートインターチェンジ」が供用開始となりました。そして現在は、東名三方原PAと館山寺バスストップの所に、平成28年度末を目標に新たなスマートインターチェンジが整備されようとしています。三方原PAはSA・PA接続型で、館山寺バスストップは本線直結型ですから、刈谷市の場合も整備するとしたら三方原PAと同じ方式になるものと思います。
     スマートインターチェンジ設置により期待される一般的な効果としては「企業活動・物流の効率化」「広域交流の活性化」「観光振興」「救命救急の迅速化」などが挙げられます。事実、「新東名浜松SAスマートインターチェンジ」においては共用開始1年半が経過して次のような実績・特徴・メリットが挙げられていました。
    @1日平均交通量約1900台/日(計画では1800台/日)
    A平日交通量約1600台/日、休日交通量約2500台/日→休日の利用が多いことから観光・レジャーでの利用が多いと想定
    B平日の大型車が開通当時から約2.3倍に伸びており、企業活動におけるスマートインターチェンジ利用の利便性が浸透してきている→5Km圏内の企業立地が大幅に増加→新たな工業用地を整備、平成28年度から造成・分譲を予定
    C近隣にある[はままつフルーツパーク]入場者は平成25年度は前年対比7%の増

     一方、三方原スマートインターチェンジと館山寺スマートインターチェンジは現在事業が進められていますがその行程は次の通りです。
               事前調査・実施可否の検討
                    ↓
             地元地域へのアンケート調査・事業説明
                    ↓
             地区協議会の設置(平成24年12月10日)
                    ↓
             実施計画の策定・提出(平成25年3月11日)
                    ↓
            連結許可申請[国交大臣](平成25年5月16日)
                    ↓
             連結許可(平成25年6月11日)
                    ↓
               中日本高速道路との協定
                    ↓
          事業 平成25年度(測量・アクセス道路詳細設計)
              平成26年度(SIC詳細設計・用地取得)
              平成27年度(用地取得・工事)
              平成28年度(工事)
                   ↓
              平成29年3月 共用開始予定

     事業費は三方原スマートインターチェンジが約16億円、館山寺スマートインターチェンジが約30億円とのことですが、高速道路区域については中日本高速道路が100%負担、一般道の部分は市が負担することになっていますが、国からの補助金などにより市の持ち出しは4分の1程度で済むとのことでした。以前本会議での一般質問において「スマートインターチェンジ設置のためには50億円ほど必要ではないかと推測する」と言った内容の答弁があったように記憶していますが、周辺道路のための用地取得を含めてもそれほど掛かることはないことが判りました。現在、国の方でもスマートインターチェンジの設置を推進していますし、自動車産業のまちとして自動車交通の利便性向上は必須の課題でもありますので、刈谷市においてもぜひ積極的かつ迅速に進めて頂きたいと思っています。