視察研修所感

自民クラブ 神谷昌宏

平成24年2月6日(月)〜7日(火)の2日間、自民クラブのメンバー3名と公明クラブのメンバー2名の総勢5名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 大阪府池田市 地域コミュニティ推進協議会について
  2. 兵庫県姫路市 兵庫県立博物館について

の2項目です。それぞれの項目毎に報告いたしますと

  1. 大阪府池田市 地域コミュニティ推進協議会について
  2. 池田市におけるこの制度は、平成19年4月、倉田市長が4期目の市長選挙においてマニフェストの筆頭項目に掲げたことから始まります。「池田発日本初[地域分権]・自分たちのまちは自分たちでつくろう」というスローガンの下、各小学校区毎に設立された[地域コミュニティ推進協議会]に個人市民税の概ね1%の予算提案権を付与するという制度です。名古屋市における地域委員会のような制度で、今回刈谷市でも実施しようとしている[地区への一括交付金]とも似たような制度ということで、非常に高い関心を持って視察に臨みました。制度の概略を箇条書きで表しますと・・・

    • 個人市民税の1%→1協議会に付き、提案限度額約900万円
    • 11の小学校区
    • 協議会のメンバーは各種団体代表でなく、あくまで個人の資格で公募
    • 市全体で465名の協議会メンバー(1協議会30名〜65名)
    • 協議会の会長は2期4年まで
    • [池田市地域分権の推進に関する条例]において制度を規定

    そして、「予算提案権活用の流れ」は次の通りです・・・
    [協議会]予算提案事業の検討→[市]提案内容の審査→[市議会]議案の審議→[市]提案事業の実施→[協議会]提案事業の評価→[市]評価報告書の公表

    この制度で実現した事業は、各協議会の特徴を出した事業として多岐に及んでいますが、中には「本来は、1地域だけで単独で行なう事業ではなく、オール池田市として全ての地域で行なうべき事柄ではないのか」と思えるようなものも含まれていました。その点を質問したところ「地域から出された提案がきっかけとなって、池田市内全ての地域で行なわれた事業もある。そうしたものについては、その地域の提案事業としての予算を翌年その分だけ増額している。」とのことでした。

    この制度のメリットとして、「自分たちのまちは自分たちでつくる」という自主・自立型の住民自治が実践されるといことがありますが、その他には、地域で提案するからこそ事業が進めやすくなるといったこともあります。たとえば「民間の土地を借りて街路灯を付ける場合、市が設置すると地権者の許可がなかなか得られなくても、地域の提案であれば地権者も積極的に応ずることがある」といった事とか、防犯カメラ設置についても「市が主体で設置しようとすると反対する場合でも、地域の提案であれば住民はOKする」といったことなど、地域に提案する権利を任せるということは、逆に地域に責任と義務を課すということにもなるのです。

    一方で、課題もあります。たとえば900万円の提案権があった場合、その年に全て消化してしまおうということで、ややもすると不要な事業まで要望する場合もあり得ます。つまり単年度制の弊害であります。そこで今後は、残った予算は基金として積み立てて、将来その地域が大きな事業を行なう場合の備えとして蓄えることが出来るよう基金条例も制定する予定とのことでした。また、これまでは人口割りで予算が付いていたものを、今後は面積割りも加味するなど、制度を進めてゆく中で様々な改善も図られているようです。

    また、公募によって選ばれたメンバーによる協議会が、如何に民主的な運営が出来るか、そして地域の声をきちんと反映することが出来るかなど、運営面での難しさはありますが『自分たちの提案が目に見えることによる満足感』これがこの制度を推進する原動力になるのだろうと思います。

    刈谷市においては、平成25年度から[地区への一括交付金]の実施が計画されています。今後その仕組みづくりの議論が行なわれて行くと思いますが、今回の視察で学んだことをしっかり生かして行きたいと思っています。

  3. 兵庫県姫路市 兵庫県立博物館について
  4. この博物館は昭和58年4月特別史跡・姫路城跡内の北東部に開館しました。そして、時代の進展とともに生涯学習の拠点施設としての社会的役割が増して来たため、「交流」をテーマに掲げ、子どもから高齢者まで三世代が楽しめる新しい博物館として全面改修を実施し、平成19年4月にリニューアルオープンしました。

    展示室等の概要は次の通りです・・・

    1. ロビー
      1. 大型映像装置「メディアウォール」を設置
        縦型両面計10台の画像により、館内の展示情報や催事情報のほか、各テーマゾーンの情報をリアルタイムで発信する。
      2. 床面演出「ひょうご空中散歩」の整備
        床面に1万2千分の1の兵庫県の衛星写真を貼り付けており、その上を歩いたり、また2階の渡り廊下からは、全面を見渡すことができ、来館者が「兵庫県とのつながり」を体感できる。
      3. 「姫路城観覧スペース」の設置
        2階には、姫路城の絶好の景観を楽しめる空間を整備。また、来館者が快適に過ごすためのミュージアムカフェも設置。

    2. 1階(無料ゾーン)
      1. みんなの家
        ・民家のしつらえの中で、昔のくらしや、からだを使ったあそびをとおして、歴史的な生活文化を体験でき、こどもを中心とした三世代が交流できる空間。
        ・むかしの衣装として、十二単、鎧兜の着付けが体験でき、歴史を楽しく感じられる空間。
      2. 歴史工房
        ・身近なくらしの出来事と歴史との関わりを、様々な資料を通して学ぶことができる空間。
        ・文書や仏像などの資料を体験しながら学べる空間。
      3. ひょうごのあゆ
        ・兵庫の歴史を代表する資料を中心に、時代背景・社会・生活・文化へ意識を広げ、兵庫の歴史を発見していくテーマ展示を実施。
      4. ひょうごライブラリー
        ・歴史や文化に関する約6千冊の図書を備え、自由に閲覧ができる情報資料室。
        ・パソコンから館蔵資料や兵庫の歴史に関わる情報・ビデオ番組などを閲覧できる情報検索システムを整備。
      5. バーチャル歴史工房
        ・立体的な大型映像で時間と空間を超えて、現実には目にすることができない歴史のシーンや建造物など、臨場感をもって再現し、兵庫の歴史と文化を楽しみながら学べる場を整備。

    3. 2階(有料ゾーン)
      1. こどもはくぶつかん
        ・楽しく懐かしい雰囲気の遊園地のような空間とし、時代ごとの雰囲気を味わいながら、こども文化の変遷をたどる。
        ・明治時代から平成まで、各時代のこどもたちが夢中になり、憧れたおもちゃに出会え、祖父母世代や親世代にとっては懐かしく、こどもたちにとっては新鮮な感動を与え、三世代が交流できる展示。
      2. ひょうごの祭り
        ・兵庫県の多様な祭りを通じた交流と賑わいの空間。
        ・屋台のなりたちや、兵庫県の様々な伝統芸能を紹介し、祭りを通して兵庫県の伝統・文化やそれぞれに関わる地域の人々に触れる場として整備。
      3. 姫路城と城下町
        ・世界遺産姫路城の歴史や城郭について様々な情報を提供。
        ・姫路城と城下町の展示を通して、城と地域のかかわりや人々のくらしの視点から、姫路城を紹介。
      4. 館蔵品展示スペース
        ・館蔵品展示で構成し、歴史博物館をPRする展示を行う。
      5. ギャラリー
        ・特別展・特別企画展等を開催する。

    4. 地階
      1. 体験ルーム・ホール
        ・様々なワークショップや少人数向けの講座が開催可能な体験ルーム。
        ・映像機器を整備し、可動式の座席やステージを設け、学習プログラムや講演会の開催が可能なホール。

      年間の維持費は約1億3700万円。入場者は、リニューアル直後の平成19年度には約21万人であったものが、平成22年度からは隣接する世界遺産の姫路城が改修工事に掛かっていることもあって、約9万人弱に減少してしまいました。入場者の増員を図るために、春と秋には大きな展覧会、夏と冬には小さめの展覧会を実施、周辺の施設とジョイントしてのイベントの実施、土・日曜日には友の会の皆さんと共にワークショップの実施など、様々な手立てを講じていますが、姫路城観光のついでに立ち寄るといった印象が否めないところです。今後刈谷市においても建設予定の歴史博物館でも同様のことが言えるのですが、如何にして入場者の増員を図るかが最大の懸案であると感じました。

      また、そのためには[友の会]の充実も不可欠であると思います。この博物館の場合、[友の会]の会員は現在611名。年会費3000円。特典としては常設展は無料、展示会の開館式に招待、会報の発行など、そして[友の会]会員さんが館内案内やイベントのボランティア、郵便物の発送業務などをされていました。

      各展示スペースの中で個人的に特に魅力を感じたのは[こどもはくぶつかん]です。これは明治から平成までの時代で、子ども達が夢中になったおもちゃを始めとした懐かしい品々が並んでいました。刈谷市の郷土資料館における[川口ライブラリー]のようなもので、個人で収集した鑑定価格約10億円ほどの品々を遺族が博物館に寄贈されたとのことで、展示されているものはその内の僅か1%程度とのことでした。残りの99%は倉庫に眠っている訳ですから、刈谷市としてこの兵庫県立博物館と提携して、刈谷の博物館で展示できるようにすれば、話題性と魅力が増すのではないかと思います。実現に向けてのハードルは高いのでしょうけれど、トライしてみる価値はあると思います。

      いずれにしても、今回見てきたこと、刈谷市における歴史博物館建設の中で生かして行きたいと思います。そして「この博物館を見るためにわざわざ刈谷に来た」という方が増えるような、魅力ある博物館に向けてしっかり取り組んでゆく必要があると思います。