文教委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成22年10月27日(水)〜29日(金)の3日間、文教委員会のメンバー6名と当局2名の合計8名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 鳥取県鳥取市 校庭の芝生化について
  2. 鳥取県倉吉市 教科担任制について
  3. 鳥取県米子市 学校事務共同実施及び特別支援教育について

であります。
初日・2日目と生憎の雨に降られてしまいましたが、芝生化した小学校を訪問するなど、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 鳥取県鳥取市 校庭の芝生化について

    本年度刈谷青年会議所が創立50周年事業の一環として、日高小学校の校庭芝生化に取り組んでおり、その際参考にしたのがいわゆる『鳥取方式』であったということもあり、今回の視察は非常に楽しみにしていました。先ず、市役所において教育委員会の担当者より概要の説明、その後、実際に平成20年より芝生化をしている中ノ郷小学校を訪れ、校長先生より直接現場の声を伺いました。

    鳥取市では平成20年に2校、平成21年に4校を芝生化していました。どの学校も、NPOグリーンスポーツの働きかけにより、雑草対策や砂ぼこり対策といった学校側の事情により、PTAなどが中心となって芝生化に取り組んだようです。従って、芝生化の要望が学校側から挙がった際に教育委員会としては、「その後の維持管理についてPTAとしての確約がきちんとされているか」が許可をするポイントにしているとのことでした。逆に言うと「PTAや地域まかせで、市としては少し腰が引けているのではないか」という印象を持ちました。今回刈谷JCが行なった芝生化は「地域の絆作り」が主目的で、そのための手法として校庭の芝生化を行なうというものでした。私が今回鳥取市の例を見て感じたことは、[校庭を芝生化すること]と[地域の絆を深めること]とは、どちらもが目的であり、またそのための手段でもあるということです。つまり、芝生化をすることにより結果的に地域を巻き込み、その副産物として地域の絆が深まったということでも良いのではないかという考え方です。

    今回、鳥取市において説明された芝生化の効果(メリット)としては・・・

    • 夏場の地面温度の上昇抑制
    • 砂ぼこりが減少する
    • ケガを気にせず素足でのびのび遊べる
    • 緑色がもたらす視覚的効果で安らぎを与える
    • 手足肌への感触が良い
    • 子どもの外遊びが増える
    • 体力増進、ストレス発散などの効果が見られる
    • 午後の授業に集中力が高まる
    • 不登校が減った
    • 給食の残さが減った

    などが挙げられていました。逆に課題(デメリット)としては次のようなものがあるとのことです・・・

    • 維持管理(水やり、芝刈り、施肥)はPTAなどが主体的に取り組むこととしているが、教職員の負担となっている場合が見受けられる
    • PTA役員が交代した場合、維持管理を継続できるかどうか不安である
    • 芝生の養生などで利用を制限する場合があり、利用者間の調整が必要である
    • 散水に水道を利用した場合、水道料が高くなる→地下水・用水路を利用

    このように、最も課題として挙げられるのは、やはり維持管理を誰が、どんな予算でやるのかということだと思います。この点について、中ノ郷小学校の場合、芝刈りは3回/月、水やりは4〜5回/月、芝生が剥げた部分の補修1回/年、冬芝の種まき1回/年ということで、「それほど大変なことではない」との認識をされていました。

    芝生化のための予算としては、初期投資費用は(財)鳥取県体育協会の補助金(40万円)を活用し、維持管理については本年度からは原材料費の一部を市が補助する制度(25円/m²)が創設され、それ以外はPTA予算で賄っていました。

    今回の視察を通じて私なりに感じたこととしては、先に例示したような芝生化の効果がきちんと実証できるのであれば、芝生化するかどうかを単に学校だけの判断に委ねるのではなく、予算的な措置も含めて、市として積極的に推進しても良いのではないかということです。維持管理に対する負担については、雇用創出の観点からシルバー人材センターに委託することも1つの方法ではないかと思います。また、比較的面積が狭く、競技種目による問題といったことも発生しない幼稚園や保育園の園庭の芝生化は比較的取り組み易く、子ども達へのメリットも大きいのではないかと思います。いずれにしても、日高小学校での試みから課題を導き出し、改善をして少しでも前に進めてゆくことを期待したいと、今回の視察を通して感じました。

  2. 鳥取県倉吉市 教科担任制について

    倉吉市では平成21年度からモデル校を指定し、小学校6年生での教科担任制(3〜4教科)を導入していました。平成21年度は1校、平成22年度は2校において、書写・社会・理科・音楽・家庭科で教科担任による授業を行っているのです。 その成果としては・・・

    • 得意分野や専門性を活かした教科指導を行い、児童の興味・関心・意欲を高めることができた。教師の指導力の向上にもつながった。
    • 教材研究・教材準備のための時間確保に努め、授業の質の向上につながった。
    • 教科毎に教師や教室が変わることで、児童に適度な緊張感を与えることができた。
    • 担当者全員で学年の児童を育てるという意識が強くなり実際の指導でも生かすことができた。(複数の教師の目で児童の課題やよさを見ることができ、指導の幅を広げることができた。児童に対して複数の相談窓口を設けることができ、担任以外の先生に相談する児童もいた。)
    • 教職員それぞれの専門性を生かした指導ができている。(教材研究がしっかりでき、授業内容を充実させられた。)
    • 教職員のチームワークがうまく機能している。(児童理解、学習規律等)
    • 保護者はたくさんの教員に見てもらっていると肯定的に評価している

    というものでした。そして児童・保護者に対してのアンケートにおいても「授業がわかりやすい」「色々な先生と話が出来て良かった」といった肯定的な回答が多くありました。但し、NRT(習熟度テスト?)の数値が具体的に上がったという形での評価にまで至っていないので、その点についてはもう少し時間が必要であると思われます。
    一方、課題としては・・・

    • 時間割編成の工夫と授業時間数の確保(欠時の補充・自習の扱い等)
    • 打合せ時間の確保と協議内容の徹底
    • 年度当初の教員の配置が遅い。配置される教員の得意分野が分からず、何を担当するのか決定しにくかった。

    というものでした。これらの[効果]と[課題]を聞いて思ったことは「課題は、教師側に発生する問題点だけであって、子ども達にとっては[効果]=良いことばかりではないか。これほどまでに良いことならば刈谷市においても直ぐに教科担任制を実施してみるべきではないか」ということです。倉吉市の場合、過疎化・少子化の影響で1学年に1クラスしかない小学校も複数あるようです。もちろんそういった学校においては、実施したくても[教科担任制]など行なうことが出来ません。その点刈谷市では、複数のクラスがあるという点では遥かに恵まれているのです。その点について倉敷市の担当者は「羨ましい!」と仰っていました。

    それでは[教科担任制]への実施を阻む障壁とは何なのでしょうか・・・? それは、小学校の先生方が持ってみえる「自分たちが児童の全てを見るのだ」という、良い意味での責任感なのだと感じました。そうした小学校の先生方の意識を変えること・・・それさえ出来れば[教科担任制]は来年度からでも実施できるしくみであると思いました。

  3. 鳥取県米子市 学校事務共同事業及び特別支援教育について

    この米子市では、[学校事務共同実施]と[特別支援教育]の2つの項目について勉強をして来ました。それぞれの項目ごとに報告しますと・・・

    [学校事務共同実施]

    これは鳥取県として行なわれている事業で、これまでは1つの学校に1名の事務職員(県職員)が置かれていたものを、1中学校区にある複数の小学校単位ごとに、複数の事務職員が1つのチームになって業務を遂行するというしくみに変えたものです。これにより事務の効率化(各学校単位に行なっていた同じ仕事を一本化するなど)や正確性の向上が期待できるのです。県の単位で見たときに、これまでは児童数の少ない小学校にも1名の事務職員が配置されていたものが、そういったところはたとえば「3つの学校を2名の事務職員で受け持つ」とったこともありますから、事務職員の効率化に繋がる事業であると言えます。しかし、この事業のもう1つの重要な目的としては「教師の事務作業に掛かる負担を軽減する」といったことも挙げられるのです。つまり、一人一人の事務職員が行なっていた仕事をチームを組んで複数で執行することにより、効率が良くなり、これまで教師が行なっていた事務も事務職員で担えるようになる・・・ということです。そういった点では[職員の合理化]と[教師への負担軽減]といういわば、相反する目的での事業であり、過疎や少子化の影響で児童数が少ない学校が現れている県ゆえの苦肉の策と言えるのかもしれません。刈谷市にとっては[教師への負担軽減]の観点からは、市単独での臨時事務職員の充実が適切な手法であると思っています。

    [特別支援教育]

    財政的に厳しい米子市においては、限られた教育に絞りながらということで[学校図書館教育]と、今回の[特別支援教育]に力を入れていると言うことでした。その[特別支援教育]の特徴としては「障害の有無にとらわれることなく」ということで、知的・身体・精神障害、発達障害などの障害がある児童生徒だけでなく、DV被害に逢っている子ども達や生活保護・準要保護家庭の子ども達も含めて、一人一人の教育的ニーズを把握して適切な指導や支援を行なっているとのことでした。

    具体的には、小学校の在籍時から中学校卒業までを一元化した様式での個別の支援計画が立てられ、それを作成するためのリーフレットの全教職員への配布と教職員研修が行なわれていました。発達障害のある児童を対象とした通級指導教室は、現在市内4教室に74名の児童が通級中。平成18年度にはまなびの支援室を開設して、常勤するLD等専門員(2名 教員の資格があり、更に大学での研修に派遣)が保育園・幼稚園・学校を巡回して保護者からの相談・支援に対応していました。また、刈谷市では本年度更に拡充して15の小学校に対して20名となった発達障害児のための加配教諭については、米子市では小学校では24名、中学校では10名を配置していました。学校数は小学校23校、中学校11校ですから1校にほぼ1名といった割合なのですが、小学校の児童数約8500人、中学校の生徒数約4500人といった数字から見ると、一校当たりの児童生徒数が少ない関係で、障害児への加配は刈谷市に比べて手厚いと言えるのかもしれません。

    その他、大学との連携ということも特別支援教育の中で上手に行なわれていました。1つは鳥取大学医学部との連携です。脳神経小児科スタッフと連携したケース会議の実施や、医学部大学院生への教育施設(特別支援学校・適応指導教室など)への派遣がされていました。そしてもう1つは、島根県に隣接しているという立地から、島根大学の学生が外部ボランティアとして、図書館での本の読み聞かせや、障害児への補助のために学校に一緒に行って付き添いをしているということもありました。以前、身体障害を持つ児童の父兄から「『学校内でお母さんが付き添って、○○ちゃんの身の回りの世話をして欲しい』と学校側から言われている。そういったことを担うことが出来るボランティア制度はないかしら」と相談を受けたことがありますが、正に今回の米子市における特別支援教育での外部ボランティアはそうした父兄の負担を軽減してくれる制度です。

    また、学校の施設整備全般については予算が少なく、刈谷市ほど進んでいないのが実情でしたが、身体障害児のいる学校には新たにエレベータを設置するなど、特別支援教育の視点にある「一人一人の教育的ニーズを把握して、適切な指導や支援を行なう」といった言葉通りの体制であり、刈谷市においても多いに見習うべき点であると思いました。