企画総務委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成20年10月8日(水)〜10日(金)の3日間、企画総務委員会のメンバー8名と当局2名の合計10名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 千葉県浦安市 市民活動基金
  2. 千葉県習我孫子市 提案型公共サービス民営化制度
  3. 東京都江東区 防災センター事業

についてであります。
以下、視察地ごとに報告します。

  1. 千葉県浦安市 市民活動基金について

    これからのまちづくりは、市民・企業・行政のパートナーシップに基づく役割分担が基本となり、お互いの信頼関係に基づいた『協働』が必要になってきます。そこで浦安市では市民活動を支える環境作りの一環として平成14年に『浦安市市民活動基金』を創設しました。この基金の特徴は、単に市の拠出金だけで作る基金ではなく、市民・企業に広く市民活動への寄付を呼びかけ、市民が参加して作る基金となっています。
    具体的には・・・基金設立にあたり原資として市から5000万円積み立て、その後は市民や企業からの寄付と同額を市から拠出して市民活動に助成するというものです。

    一方、交付される補助金には2種類あります。1つは[自立促進事業補助金(通称=はじめの一歩)]で、これはその名前の通り団体の自立を促進するのに効果的な事業に対して補助されます。1事業について10万円以内、補助対象経費総額の100%が支給されます。しかし1団体につき1回限り、1事業についてしか受け取ることは出来ません。
    もう1つは[活性化事業補助金(通称=ステップアップ)]で、活動期間が1年以上の団体が主体性を持って行なう事業であって、公共性が高く、団体の活動を発展させるのに有効な事業に対して補助されます。1事業について50万円以内、補助対象経費総額の80%が支給されます。以前に交付された事業であっても、更なる活性化が図られる(ステップアップしている)場合は申請が可能とのことです。但し、その場合でも1事業につき3回までしか申請が出来ません。そうなると事業の中には、「補助金が受けられないから来年度以降中止」といった可能性もあるわけで、事業の種類によっては単年度あるいは短い期間での継続よりも、長期に渡って継続されることにより始めて成果が出るといった事業もあるはずですから、そういった事業の継続性に対して問題があるのではないかと感じました。

    また、市民活動、とりわけ[はじめの一歩]を申請するような設立後間もない団体の場合、新年度に向けての1年間の度業計画というのはなかなか立て難いものです。せっかく[基金]で財源を確保するという方法を取ったのであれば、年度途中での申請受付・予算化・支給といった柔軟な対応も必要なのではないかと思いました。行政と違い「柔軟にタイムリーな対応」が市民活動の持つ優れた点なのですから・・・。申請された事業に対して補助金を支給するかどうかを決定する[審査会]は全部で8人、任期は1年で3期まで継続が可能とのことです。8人の内訳は、公募市民4人、有識者2人、企業代表2人ということでした。

    「市民・企業の出した寄付金の使い道を公募も含めた市民が決定して、市民団体の行なう事業の中で使われる」正に、市民主導のまちづくりに向けて制度(しくみ)としては素晴らしいと思います。ただ、年間の支給実績が100万円〜200万円台と少なく、まだまだ本当の意味での市民協働による事業展開の制度にはなっていないとの印象を持ちました。

  2. 千葉県我孫子市 提案型公共サービス民営化制度について

    本題に入る前に・・・、我孫子市では正副議長が女性であり、また全議員の3分の1が女性の議員であるとのことでした。首都圏の自治体を視察すると常に、女性議員の多いことと若い議員が多いことには驚かされます。

    今回視察した[提案型公共サービス民営化制度]とは、民と官が対等な立場で公共サービスを担う「新しい公共」づくりに向けた取り組みです。

    刈谷市においても、地方自治法の改正により指定管理者制度が創設されて以降、積極的にその導入を図ってきました。またそれ以前からも、民間活力を利用すために各種の事業を民間委託してまいりました。
    しかしこれらの委託はいわば「行政主体の委託」であります。つまり行政の側がそれぞれの事業を直営で行なうか、委託をするかを決定していました。

    それに対して今回の我孫子市の[提案型公共サービス民営化制度]は、正にその名前の通り、「市直営でやるのか、委託するのか」も含めて、民の側に提案をしてもらって決定するという制度です。
    具体的には、行政評価表をもとにこれまで市役所が行なっていた全ての事業リスト(1131事業)を公表→民間から委託・民営化の提案を募集→市が直接実施するより市民にプラス(必ずしも、コスト減ということだけにはこだわらない)なら委託・民営化を実施してゆくというものです。
    提案者は始めにラフな提案を提出、提案者と市とで協議して、最終的な提案として提出されます。それらの提案に対して、予備審査(担当課が提案に対する問題点などを整理。分科会の参考資料に)→分科会(各分野の専門家、受益者等で構成。業務内容に沿った審査基準を設定し審査)→審査委員会(官民の役割分担、団体の見極めを中心に審査。提案の採否、事業者の選定方法を決定)という3段階での審査が行なわれます。そして、採用となった事業については、民間への委託・民営化といったことになるのです。

    その際、事業者の選定は必ずしも提案者が事業者に決定するというものでもありません。中には、随意契約により提案者=事業者という場合もありますが、改めて事業者を競争入札において決定するという場合が多くあります。そうなると、「提案しても事業者としてその仕事が受注できるとは限らない」ということになり、新規の提案をすることに対するモチベーションが低下してしまうことになりかねません。

    事実、この制度がスタートした初年度は79件の提案があったのに対して、2年目は6件と激減しています。また、実施された事業は全て「委託」であり、今回の制度で求めていた更に進んだ官から民への流れの1つである「民営化」までには残念ながら至っていないことがこの制度の難しさを物語っているように思いました。
    ただ、今回の制度を始めたことで、官と民とがより良い公共サービスのあり方について話すきったかけになったことが、この制度の副産物であるように思いました。

  3. 東京都江東区 防災センター整備事業について

    [防災センター]という言葉を聞いて、そしてその6階建てからなる外観を見て、「流石に東京だ。防災に特化してこれだけ大きなセンターを整備しているんだ」と感心しました。ところが、資料を貰い説明を聞き始めてその認識は間違いであることに気づきました。

    今回の建物、確かに[防災センター]という名称にはなっていますが、実際に防災関係を主たる業務にしているフロアは6階建ての内の1フロアだけ、後は「環境」「清掃リサイクル」「道路」「交通対策」「水辺と緑」「情報システム」といった、災害の時には防災課と連携して業務を行なうことの多い業務課が、常日頃は通常の業務行なっており、「第2庁舎」といった位置づけの建物でありました。
    そこで、ここでも本題に入る前に、「では第2庁舎と位置づけたとき、現在建設中の刈谷市の庁舎と比べてどうか」という点についても検証してみたいと思います。

    先ずその建設費ですが、総事業費約33億4千万円、そのうち防災関係の情報通信システム整備費の約8億7千万円を引くと、庁舎機能の建設費としては約24億7千万円となります。述べ床面積が約4722m²ですから、1m²あたりの建設コストは約52万円となり、今回の刈谷市の1m²あたりの建設コスト39万円に比べるとかなり高額なものとなっています。
    「第2庁舎」と呼ぶとなんとなく「贅沢」といったイメージになり「防災センター」と呼ぶと「安全・安心を守る大切な建物」といったイメージに感じます。(意地悪な見方ですが)、今回のこの施設は敢えてそのイメージ作りをしたのではないかと思います。

    さて、このような理由から、この建物そのものから学ぶ点よりも、江東区が行なっている防災に対するあらゆる施策の中から、「現在刈谷市では行なっていないが、今後導入を検討しても良いのではないか」と思われる2つの施策についてここでは紹介したいと思います。

    1点目は[デジタル同報防災無線]です。
    予算としては3億5千万円で、江東区内全部で112箇所の拡声器が設置され、災害時の警報を到達距離半径250mで江東区全域にクリアな音声で伝達します。先日の岡崎市で発生した水害の際には、市民への避難勧告がスムーズに伝わらなかったという問題点が指摘されています。そうした中、この区内各所にある拡声器での放送は、当局の評価では「たとえ全てに聞き取れなくても、効果が一番高い」とのことでした。
    つまりこの拡声器から何かが聞こえてくることで、その他の情報伝達ツールである、ケーブル放送やFM放送に注意を向けるきっかけになるようです。またそれ以外に整備されている、[デジタル地域防災無線]や[一斉情報配信システム][衛星電話]といった各ツールがそれぞれ補完し合って、住民へのスムーズな情報伝達が図れるのだと感じました。

    2つ目は、[消火器ネットワーク]です。
    これは区内50m間隔で街頭消火器が路上などに設置されているものです。江東区全体では3064基もの街頭消火器が設置されているとのことでした。地震の後に発生する大火災を防ぐためには初期消火が欠かせませんが、地震後各地で発生する火災に対して消防車の出動は容易ではありません。そういった部分を補うためには、イタズラなどの対策あるいはコスト面についてのもう少し詳しい調査が必要ではありますが、刈谷市においてもこの整備は検討しても良いのではないかと思いました。