政務調査についての所感

自民クラブ 神谷昌宏

平成19年10月3日(水)〜5日(金)の3日間、自民クラブのメンバー8名(議長含む)で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 福岡県大牟田市 大牟田エコタウンプランについて
  2. 佐賀県鳥栖市 青少年健全育成事業『夢プラン21』について
  3. 長崎県諫早市 健康福祉センターについて

であります。
それぞれの項目毎に報告いたしますと

福岡県大牟田市 大牟田エコタウンプランについて

  1. 設置の経緯及び目的について

    大牟田市は明治以来、三池炭鉱とそこから派生した重化学コンビナートの隆盛によってまちは発展してきましたが、石炭から石油へのエネルギー転換や産業構造転換の波を受け、三池炭鉱は平成9年3月、100年余りに及ぶ歴史に幕を閉じ、石炭産業後の新しいまちの未来図を描くことが緊急の課題となりました。

    ポスト石炭のまちづくりを模索する中で、鉄道や港湾をはじめとする交通利便性、重化学コンビナートで培われた工業系技術及び公害防止技術の蓄積、臨海部の広大な低未利用地等、環境問題・リサイクルへの対応の必要性といった時代の要請など、多方面の観点から検討した結果、環境・リサイクル産業の創出による「環境」を一つの切り口としたまちづくりをすることとなりました。

    これを受けて平成9年度には、具体的な環境・リサイクル産業創出の基本的枠組みを定めた「大牟田市中核的拠点整備実施計画」を策定し、さらに、この計画をもとに福岡県をはじめとする関係機関の協力も得ながら「大牟田エコタウンプラン」の策定を進め、平成10年7月に全国で5番目のエコタウン地域として、厚生省(当時)と通商産業省(当時)から共同で承認を受けました。

  2. 施設概要について

    このエコタウンプランにおける中心施設は、なんといってもRDF発電でありますので、その施設について報告します。

    一般廃棄物のうち可燃ごみは、その多くが有効利用されることなく焼却処理されており、ここ数年、その焼却に伴ない発生するダイオキシン類が社会問題となっていました。

    この施設では、ダイオキシン類対策に有効とされる可燃ごみのRDF(ごみ固形化燃料)化を促進し、それを燃焼するRDF発電所で電気及び熱エネルギーに変換し、地域内施設への供給を行うとともに余剰電力の売電をしています。RDFとは、可燃ごみ(生ごみなどを含む)の約50%を占める水分を蒸発し、圧縮成形した固形燃料で、単位重量あたりの発熱量は、石炭の約7割に相当し、1キログラムあたり3,000キロカロリーから4,000キロカロリーと高く、安定して高温で燃焼することができるので、ダイオキシン類対策に有効といわれています。また、乾燥し、減容化されているので、悪臭を出したり腐敗することがなく、輸送や貯蔵がしやすいという特徴があります。

    この事業は、大牟田市のみのゴミ処理をするものでなく、福岡・熊本両県の19市町村で製造されたRDFを処理しています。この計画が持ち上がった当時、各自治体で使われているゴミ焼却場のダイオキシン対策を厳しい基準にすることが求められており、小さな自治体では対応できない状況にありました。そのためそれを解決する方法として、ゴミのRDF化による広域での処理ということが考えられたのだと思います。

    「現在、収支バランスがどのようになっているか」ということが非常に関心のある点です。収入としては、[九州電力に売電した収入]と[各自治体から持ち込まれるRDFの処理委託料]が主なものです。この[RDFの処理委託料]については、この施設が稼働した当時は1トン当たり5000円であったものを9500円に現在は値上げをしているとのことでした。その理由は、市民のゴミ減量化に対する意識が高まり、ゴミが減量化されたことによりRDFの供給量が減少した、しかし、RDFを処理するための固定的な費用は変わらないため、1トン当たりの処理委託料を値上げせざるを得ないという訳です。このことは、我々の刈谷知立環境組合における焼却施設においても同じ事が言えるのですが、ゴミ減量化とコストとの反比例といった点は極めて難しい問題であると思います。

    ごみを固形燃料に加工し、その燃料を使って火力発電をするという発想と、日本で初めての試みに挑戦するという気概は素晴らしいと思います。石炭の町として、日本の産業を長い間エネルギー面から支えてきた大牟田市が、エネルギー構造の変化による炭鉱の閉山・人工の減少・高齢化率の上昇などの厳しい状況の中、石炭産業に代わる基幹産業を創出しなければならない状況は、今日自動車産業の好調により潤っている刈谷市にとって、決して他人事として捉えてはいけない教訓を与えてくれたと思います。RDFの安定供給・安全性・発電事業の採算性・市民の理解などこの事業には多くのリスクもあり、この事業そのものを刈谷市において取り入れるという訳には行きませんが、この事業そのものよりも、その発想と前向きに挑戦して行こうとする職員の姿勢は、比較的恵まれた環境にある今の刈谷市にとって、その環境に安住することなく、見習うべき姿のように思います。

佐賀県鳥栖市 青少年健全育成事業『夢プラン21』について

  1. 事業の内容と目的

    地域の人々の支援を受けながら、子ども達の夢を実現するプロセスを通じて、健やかな成長を支援すると共に、希薄化する世代間交流や地域間交流の活性化につなげることを目的に平成17年度から行われている事業です。

    具体的には、市内に在住または通学する小・中・高校生を対象にして、実現してみたい夢を募集し、採用された事業について、[夢プラン実行委員会]より100万円を限度として支援を行うものです。計画から実行までを基本的には子ども達中心に行うのですが、やはり子ども達だけでは実現が難しい問題がありますので、実現を支援する[てだすけ隊]を公募して、幅広い世代間での交流や地域交流の活性化を図っています。

    採用例は平成17年度には「朝日山でそうめん流し」「ソーラーボートを使ったエネルギー教室」「花いっぱい」「大きなお菓子の家づくり」「鳥栖のCMづくり」
    平成18年度は「秘密基地をつくりたい」「鳥栖スタジアムを満員にしたい」「大きな凧をあげたい」
    平成19年度が「とっとちゃんの絵本作り」「いかだを作って川を下ってみたい」「巨大迷路をつくりたい」「川に魚を放流して自然公園を増やしたい」といった事業です。

    事業の目的・内容は素晴らしいと思うのですが、何点か気になった点もありました。
    1点目は、総事業費が平成17年度500万円、平成18年度200万円平成19年度100万円といった具合に減っている事です。
    2点目は、応募総数が平成17年度286件、18年度81件、19年度51件とこれも減ってきてしまっている事です。
    3点目は、夢プランとして事業が採用されている学校が平成17年度と18年度は、ほぼ同じ学校であった事です。

    夢の提案については、いわば「材料出尽くし」となって、新規の取り組みが減少してゆくことは仕方のないことかもしれません。しかし一方で、地域・世代間の交流の結果せっかく始まった事業が、打ち上げ花火的に、単年度で終わってしまうのは残念なことです。ある年から始まった事業が、その組織やノウハウを生かしてその後も継続してゆく、そしてその結果、地域の子供達と大人との交流が活発になる、正に「地域・世代間交流のための事業」を生み出すインキュベータの役割をこの『夢プラン21』が担ってゆけたら更に素晴らしいものになると思いました。

長崎県諫早市 健康福祉センターについて

刈谷青果市場跡地に保健センターの移転を計画している本市にとって、単なる保健センター機能だけに止まらず、「健康づくり」といった内容も入れ込んだ施設として、更に充実した施設となることが期待されています。そうした折、この諫早市の『健康福祉センター』の視察ということで、「健康づくり」といった視点からどういった施設整備がなされているか非常に期待をしていたのですが、残念ながら施設内容では、新保健センター建設にとって参考となるものはありませんでした。しかし、健康福祉部で取り組んでいる事業の中で、私にとって参考になる事柄がありました。

その1点目は、乳幼児の任意予防接種として『インフルエンザ予防接種』に対しての補助制度があることです。具体的には、生後6ヶ月〜小学校就学前の乳幼児を対象に、年度内に2回、1回当たり3500円の半額を公費負担(自己負担額1750円)という内容です。先の刈谷市議会9月議会一般質問において私は、「子育て支援策の一環として、インフルエンザ予防接種に対して、65歳以上のお年寄りに対して実施しているのと同じように、1回1000円で受けられるよう、公費による補助制度を設けて欲しい」との要望をしました。それに対する市当局の答弁は「平成6年からは個人の意志と責任で行う任意接種となりました。また、厚生労働省の予防接種実施要領に基づいた予防接種ガイドではインフルエンザ予防接種の積極勧奨を行わないように留意するとしていますので、積極的勧奨につながる小中学生の予防接種費用補助は考えておりません。」というものでした。「予防接種費用補助は、インフルエンザ予防接種の積極勧奨につながり、厚生労働省の指導に反するので実現出来ない。」と言っていたのに「諫早市では実施しているではないか」という驚きでした。今後、この諫早市での事例を参考に再度、刈谷市としての実現を要望して参りたいと考えています。

2点目は、[産婦・新生児訪問指導]と[こんにちは赤ちゃん事業]との両立、すみ分けの問題です。諫早市でも刈谷市同様[産婦・新生児訪問指導]として、訪問希望者に対して助産師等が訪問して育児・保健指導・相談を行っていました。そしてその事業と同時に、[こんにちは赤ちゃん事業]が行われているのです。対象は、新生児の生まれた全世帯、こちらへは母子保健推進員や民生児童委員が訪問しており、[産婦・新生児訪問指導]と[こんにちは赤ちゃん事業]とが互いに補完しあっているとのことでした。民生児童委員等による[こんにちは赤ちゃん事業]の推進については、余り賛成でない私としては、あくまで刈谷市のように助産師等の専門家による訪問事業にこだわってゆきたいと思っていますが、反面教師としては参考になった事業でありました。