議会運営委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成17年11月9日(水)〜11日(金)の3日間、議会運営委員会のメンバー9名と議長・副議長、当局2名の合計13名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 埼玉県戸田市 議会改革特別委員会について
  2. 福島県福島市 一問一答方式の一般質問について
  3. 岩手県江刺市 議員提出議案による条例の制定について

であります。

現在私は議会運営委員会の委員長を務めています。その議会運営委員会では、各会派から提案された『議会運営に関する検討事項』を毎回議論しており、その取り回しは委員長である私が行うことになっています。そこで、「先進自治体の現状をしっかり勉強して、『議会運営に関する検討事項』を議論する際の参考にしたい・・・」そういった意気込みで今回の視察研修に参加しました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 埼玉県戸田市 議会改革特別委員会について

    議会運営のあり方に「これで完璧」というものはありません。市民の付託に答え議員としての責務が十分果たせるよう常に運営方法を見直し、公正で公平・市民にとって開かれた議会に成るように改革を進めて行かねば成りません。そのために刈谷市議会では、議会運営委員会の中で、各会派から持ち寄った『議会運営に関する検討事項』を議論する時間を設けています。それに対してこの戸田市では、議会改革特別委員会を設置して同様の議論を行っていました。委員会の進め方としては、テーマの大枠(4項目)を調査事件として議決し、細目のテーマについては設置当初に目安として確認し、ほぼ月1回の開催で、毎回2項目程度のテーマを議論しているとのことであります。進め方の特徴としては(1)まず、自由討議によって方向性を見いだし、(2)会派持ち帰り検討等を含めて、委員会としての意見の一致を目指す方法で、(3)多数決は極力避ける運営を行ってきていました。特に、(1)の進め方により委員会自体が非常に良い雰囲気で行われているとのことでした。私も現在検討課題を議論する際には、「出来る限り自由に発言する機会を増やす」ことを目指して、委員会の[休憩]と[再開]を上手に使い分けながら行うことを心がけています。やはり自由な雰囲気で活発に議論することで、よりよい意見の一致を見いだすことが出来るのではないかと確信しました。但し、この戸田市においては刈谷市同様、(3)のように極力多数決を行わないようにしていますが、「少数の反対意見により物事が決まらない」というこのやり方が、本当に民主的かどうか若干の疑問があるところです。十分な議論を尽くした後に検討項目を決定する方法としては、多数決を行っても良いのではないかと思います。

    議会改革特別委員会でこれまでに取り組んできた結果としては

    1. 委員会傍聴の見直し
    2. 政務調査費の見直し
    3. 一般質問を一問一答方式に変更
    4. 常任委員会の所管と名称の見直し
    5. 陳情等の取り扱いの見直し
    6. 議員定数の見直し
    7. 定例会の回数について
    8. 議決事件の追加
    9. 常設的な特別委員会の見直し

    などでありました。これらの項目の中には、既に刈谷市では改革されているものも幾つかありました。また、[3. 一般質問を一問一答方式に変更について]は、この後の福島市の視察項目でありますので、ここでは戸田市におけるそのやり方だけ少し触れておきたいと思います。変更となった平成16年6月からは、「初回のみ総ざらい質問・答弁で、2回目から一問一答方式」でしたが、その後も毎議会ごとに見直しの議論がされ、平成17年6月からは、「件名ごとに、1回目は総ざらい質問・答弁、2回目からは要旨ごとの一問一答」に更に変更になったとのことでした。登壇して行うのではなく、議員席の前に設置した質問席(当局と対峙したスタイル)で発言。質問の持ち時間は1人40分(答弁時間は含めない)で、質問の回数制限はありませんでした。一問一答方式に変えたポイントとして、「議員・当局・傍聴者の三者の立場に立った一般質問を心掛けている。」という言葉が大変印象的でした。

  2. 福島県福島市 一問一答方式の一般質問について

    「現在の一般質問を一問一答方式に替えてはどうか」という提案は、刈谷市議会においては以前から出されており、今年も提案がされ現在議会運営委員会の検討項目の一つとして議論されています。また、昨年もこの一問一答方式での一般質問を行っている先進市として千葉県鎌ヶ谷市を視察しました。そこでこの所感は昨年の鎌ヶ谷市も参考にしながら書いてゆきたいと思います。

    そもそも一問一答方式の目的は、

    1. 傍聴者に対して[質問←→答弁]のやり取りを判りやすくする。
    2. 掘り下げた議論を行う。

    ということでありますが、その方法については提案者それぞれに考えが違うようであります。そこで現在議会運営委員会では、次回の委員会の際に一問一答方式の具体的なやり方を示して貰うようにお願いしているところです。そういった意味では今回の視察は具体的なやり方の一つとして参考になった事例でした。

    福島市でのやり方を紹介しますと、1回目から通告細目ごとの一問一答。登壇して行うのではなく、議員席の前に設置した第2演壇(当局と対峙したスタイル)で発言。質問の持ち時間は答弁時間も含めて1人60分。質問の回数制限はなし。というものでした。しかし、当局からは質問するに当たっての通告を非常に細かく求められたり、これまで以上に綿密なヒアリングを行ったりと、一般質問がセレモニー的になってしまわないかが危惧される内容のように思いました。

    私は、この一問一答方式のやり方のポイントは3つあると思います。

    1. どの席で発言するのか。
    2. 発言回数の制限はあるのか。
    3. 発言時間の制限はあるのか。

    ということですが、その点からすると昨日の戸田市、そして今回の福島市とも、3. の発言時間に若干の違いはありますが、一問一答方式のやり方としては基本的に同じスタイルでした。一方、昨年の議会運営委員会で視察した鎌ヶ谷市におけるやり方は少し違っていました。概要を改めて紹介しますと・・・

    • 質問は、1回目の時に通告したすべての項目について質問をし(ここまでは刈谷市も同じ)、2回目以降は一問一答方式となる(1つの項目について何度も掘り下げた質問をして、その後次の項目の質問に移る)
    • 発言時間は答弁を含めて一人60分以内。発言回数の制限はない(以前は刈谷市同様3回までであった)
    • 登壇については、1回目の質問・答弁は登壇して、2回目以降は自席にて行う
    • 課長による答弁も認めている(何度も突っ込んで質問するとどうしても質問内容が細かくなるため)

    ということで、「個々の議員が現在刈谷市が行っている一般質問のスタイルと、一問一答式のどちらを選んでも良い」ということであれば、昨年視察した鎌ヶ谷市のやり方への移行が最もスムーズなのではないかという印象を持ちました。

    いずれにしても、目的達成のために逆に議員としての自由な発言が制約を受けることのないように、今後議会運営委員会の中で具体的なやり方を含めてしっかり議論をしてゆく必要があると思いました。

  3. 岩手県江刺市 議員提出議案による条例について

    地方分権一括法の施行(2000年)以来、国と地方の立場が対等となり、地方議会が担う役割が一層重くなって来ています。行政のチェック機能に加えて、議会が自ら市民や専門家から広く意見を聞き政策に反映する努力が求められるようになってきました。その一つの手法として議員提出による政策的な条例の制定ということがありますが、残念ながら刈谷市ではこれまでそのような例はありません。そこで今回は、『地産地消推進条例』を議員全員(議長・副議長は立場上はずれたが)で作成した江刺市にお邪魔し、「なぜ議員提案の条例が必要なのか」「制定までのプロセス」などを実際に条例制定に携わった議員からお聞きをすることにしました。

    今回の制定に向けた特徴的な事柄としては、議長・副議長を除くすべての議員が参加した[えさし地産地消推進議員連盟]を結成して、市会議員の持つ地域密着性を生かして、より多くの市民を運動に巻き込んできたことです。お母さん方との給食センターでの意見交換会、JAとの意見交換会、商工会議所への説明会、市民約700人参加によるシンポジウムの開催、条例案アンケートの実施など、条例案を作るまでの課程そのものを大切にし、市民と一緒に案を作ってきたことにより、これまでのように市当局が作った条例に比べて市民の生の声が反映された条例となっています。

    今回の条例制定は江刺市議会だけでは為しえません、早稲田大学マニフェスト研究所の草間さんという方がボランティアで応援していたことが大きな要素だと思いますが、それ以外に今回我々に熱く語ってくださった[えさし地産地消推進議員連盟]の会長(?)であった若生議員、その若生議員に対して最初にこの条例制定の話を持ちかけた佐藤議員など、目標に向かって熱く燃えるメンバーの存在があったればこそ制定にまでこぎ着けることが出来たのだと思います。そして、その目標とは・・・(今回はたまたま『地産地消推進条例』でありましたが、)地方分権時代における新しい地方議会の役割の確立であり、そのために議員ひとり一人も政策立案能力を持った議員として成長してゆくことではないかと思います。