刈谷知立環境組合 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成17年11月1日(火)〜2日(水)の2日間、刈谷知立環境組合議員14名と代表監査委員1名、職員5名の合計20名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 千葉県柏市 柏市第二清掃工場
  2. 東京都板橋区 板橋清掃工場

についてであります。

炉の処理能力としては、柏市第二清掃工場125t/日×2炉。板橋清掃工場300t/日×2炉と大きな違いがありますが、処理方法は両工場共に[ストーカー式焼却炉+灰溶融炉]ということで、平成21年の供用開始に向けて現在準備が進められている刈谷知立環境組合の処理方式と同じでありました。

この視察に出る前日の10月31日(月)、刈谷知立環境組合でも施設建設のための入札があり、来る11月14日(月)の刈谷知立環境組合議会において、議案として審議がされることになっています。そこでこの所感では、視察した2施設について「施設ごとのまとめ」とせずに、「議案を審議する際に参考となる特徴」ごとにまとめてみたいと思います。

  1. 建設費用(イニシャルコスト)とランニングコストについて

    ごみ焼却場建設は仕様書に基づいた入札によって、建設の金額と業者が決定します。しかし、ごみ焼却炉のように稼働してからの維持管理や消耗による大規模改修などで多大なランニングコストがかかる施設において、単純に「建設費用が安い」という視点でだけの発注をしてもよいのだろうか。「イニシャルコストは低かったけれど、ランニングコストが高いものについた。」という結果になりはしないか。そのためには建設から少なくとも耐用年数期間までのトータルのコストを考える必要があるのではないか・・・という疑問があります。

    その点の疑問に答える手法として、今回視察した[千葉県柏市 柏市第二清掃工場]においては長期責任委託という方法を取っていました。これは公設民営によるPFI事業に準拠したものであり、ごみ処理施設の大規模修繕までを含めた包括運営管理業務委託を民間企業に対して20年間の契約で行うものです。それにより20年間管理運営を公共自らが実施する場合、約310億円のコストがかかるのに対して、長期責任委託の落札額は177億7650万円と、従来の方式に比べおおむね6割に収まったとのことでした。

    長期責任委託の入札においては、施設を建設したプラントメーカー以外の参加もあったようですが、結果的にはプラントメーカーの100%子会社が管理委託をすることになりました。稼働後の部品調達等の利便性を考えれば、やはりプラントメーカーがそのまま維持管理をして行くことが自然なのだろうと思います。であるならば、建物建設における入札の際に長期責任委託を含めた仕様での入札にすべきではなかったかと思います。

    今回のこの柏市の事例を参考にするのであれば、この度刈谷知立環境組合において建設する新しいごみ焼却施設について、当初必要な建設費用以外に今後のランニングコストについても、一体のものとして議論する必要があるのではないかと感じました。

  2. 環境対策 各種基準の自己規制について

    ごみ焼却施設建設における我々市民の最大の関心は、「環境面でどれだけ安全なのだろうか」という事であると思います。その点、[千葉県柏市 柏市第二清掃工場]では建設にあたり周辺住民との約束として「環境における安全面で国内最高水準のものを作る」として、法令上の規制値に比べ厳しい自己規制値を設定していました。もちろんもう一方の[東京都板橋区 板橋清掃工場]でも自己規制値を設定していましたが、その中で[ダイオキシン類]の基準については大きな差がありました。(別紙参照)

    数年前から市民の間でも[ダイオキシン類]に対する関心が高まっており、刈谷知立環境組合において今回建設する新しい施設においても、厳しい自己規制値の設定を求めて行きたいと思います。

  3. 灰溶融について

    この度刈谷知立環境組合において建設する新しいごみ焼却施設とこれまでの施設との違いの一つは、「新たに灰溶融施設が設けられる」ということであります。この灰溶融というのは、可燃ごみを焼却した時に出来る焼却灰を、電気やガスを使って1200℃以上の高温に加熱し、溶融・固形化するものです。これによりスラグという砂に似た物質が作られます。高温で処理されることにより、灰に含まれる重金属類(水銀・鉛・カドミウム・亜鉛等)はスラグの中に封じ込まれ、さらにはダイオキシン類も分解されています。このスラグは砂に替わる建設資材等の材料として活用ができたり、灰の状態に比べて容積が減少するので、埋め立て処分量を大幅に減らすことができ、埋め立て処分場の延命を図ることができるというメリットがあります。

    今回の[千葉県柏市 柏市第二清掃工場][東京都板橋区 板橋清掃工場]共に、この灰溶融施設が作られていました。しかし、「灰→スラグ」の容積が[千葉県柏市 柏市第二清掃工場]の説明では10分の1、[東京都板橋区 板橋清掃工場]の説明では2分の1とのズレがありました。また、スラグの需要がまだまだ少ないため、[東京都板橋区 板橋清掃工場]で出たスラグの内、有効に再利用できたのは約5分の1、残りの5分の4はやはり埋め立て処分場に捨てているという現状でした。

    従って、今後の刈谷知立環境組合議会の議論の中では、灰溶融炉を整備することによる、埋め立て量の減量見通しについて明確に求めて行きたいと思います。

  4. 壁面緑化について

    今回の[千葉県柏市 柏市第二清掃工場][東京都板橋区 板橋清掃工場]共に周辺の緑化には力を入れているような印象でした。また[東京都板橋区 板橋清掃工場]では施設の壁面緑化も充実していて、壁の内約2000uには緑のツタが植えられていて、その壁面緑化では環境大臣賞を受賞されたとのことでした。

    この度刈谷知立環境組合において建設する新しいごみ焼却施設においてもぜひ取り入れたい点であると思います。