政務調査についての所感

自民クラブ 神谷昌宏

平成17年7月12日(火)〜14日(木)の3日間、自民クラブのメンバー11名(議長含む)で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 苫小牧市 まちづくり基本条例の制定について
  2. 室蘭市 交通バリアフリーの実践について
  3. 恵庭市 花のまちづくりプランについて

であります。

当日は天候も良く、各種交通機関も順調で、当初予定した通りの視察時間を十分確保することができ、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 苫小牧市 まちづくり基本条例の制定について

    以前、一般質問において自民クラブの同僚議員が『まちづくり基本条例』について取り上げたことがありました。その時、「そもそも『まちづくり基本条例』て何なのだ?」という素朴な疑問を初めとして幾つかの疑問点が沸いてきました。今回の苫小牧市で先進事例はその疑問の一部に答えてくれるものとなりました。

    疑問1.そもそも『まちづくり基本条例』ってなに
    答1.まちづくり基本条例(自治基本条例)は、市民がまちづくりの主役となり、市民と議会と行政とがより良いパートナーとなってまちづくりを進めていくためのもので、「自治体の憲法」とも呼ばれているそうです。この条例の中では、まちづくりの目標に向かって、市民・議会・行政のそれぞれの立場や役割・責任を明確にしてあり、まちづくりのルールの基本となるものだそうです。

    疑問2.どうして『まちづくり基本条例』が必要なのか
    答2.2000年4月に地方分権一括法が施行され、国と地方の関係は中央集権型システムにおける「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係に改革され、地方の決定権限が大きく拡大しました。このような状況の中、地方自治体には自主・自立の自治体運営が強く求められるようになり、自治体を支える市民・議会・行政の3者が「自ら治める」ための基本的なルールを作る必要が生まれて来たからです。

    疑問3.『まちづくり基本条例』の内容は
    答3.全国の例を見てみると、『まちづくり基本条例』と呼ばれるものの内容は、盛り込まれている具体的な内容が、制定している自治体によって異なり、必ずしも一定ではないようです。苫小牧市においては、市民自治の基本理念・市民の市政への参画・市民協働のしくみ・市政運営の基本原則などについて盛り込むように検討がされてきたようです。こういった内容は、既に地方自治法という法律が存在し、その規定が見られますが、法律の規定だけでは、苫小牧市独自のまちづくりを行っていくには不十分であり、苫小牧市にふさわしい独自の内容を盛り込む必要があるようです。

    疑問4.制定までの流れと現在の状況、今後の予定は
    答4.公募により選ばれた市民6名と4名の学識経験者の総勢10名からなる「まちづくり基本条例等検討懇話会」を平成15年10月に立ち上げ、1年8ヶ月に渡る議論の結果、つい先日、平成17年6月29日に「苫小牧市まちづくり基本条例等のあり方に関する提言」(別冊参照)を行いました。この提言を参考に今後、平成18年2月議会での提案を目指して条例案の策定をおこなって行くとのことですが、提言の中で詳細に示された様々な内容が、比較的短い文章での条例の中でどのように反映されて行くかとても興味のあるところです。来年3月以降、ぜひ条例を入手してみたいと思います。

    この条例は作るプロセスが非常に重要です。市民・議会・行政の3者が「自ら治める」ための基本的なルールを作るわけですから、行政が作り→議会に諮り→市民が実行するというスタイルでは、作るプロセスが条例の主旨そのものに反することとなります。そういった意味では、「まちづくり基本条例等検討懇話会」のメンバーを公募したこと、その公募に応じた非常に意識の高い市民がいたことは特筆すべきことだと思います。「本来は理念条例が作られた上で、具体的な制度のための細かい条例を作るべきだが、刈谷市の場合は『市民参画条例』といった細かい条例を先に作ろうとしている・・・」と指摘をする同僚議員がいましたが、ならば来年、実際にできあがった条例を参考にして、議員提案で条例を制定しても良いのではないかと感じました。

  2. 室蘭市 交通バリアフリーの実践について

    今回訪問した室蘭市は人口の高齢化が顕著で、平成12年に交通バリアフリー法が施行したときには高齢化率21%、本年、平成17年には25%を超えているとのことです。そこで、高齢者が安心して利用できる歩行者交通ネットワークの整備が急務となり、平成15年から22年までの計画で、東室蘭駅周辺160haを重点地域と定め各種のバリアフリー対策を講じるものです。具体的には・・・

    1. 東室蘭駅構内におけるエレベーター等によるバリアフリー化の推進
    2. 駅自由通路におけるエレベーター・エスカレーター・音声による歩行者誘導サイン等の設置
    3. 駅前広場における歩道・乗降場・案内サイン・休憩施設等のバリアフリーに対応した整備
    4. 既設歩道等の路面の段差や凹凸及び勾配等の改善
    5. バス停部でのバス乗降を考慮した歩道高の確保
    6. 滑りにくい舗装材の採用
    7. 歩行者のための案内標識や視覚障害者誘導ブロック等情報提供施設の整備
    8. 歩道でのベンチ・上屋等のある休憩スペース(溜まり空間)の整備
    9. 音声信号の設置
    10. 手押し式信号機の押ボタンの高さの改善

    などでありました。

    説明を受けた市役所から出て、現場を見た限りでは「刈谷市にとって特に目新しいことをやっているわけではないな」という感想でありました。しかし、如何せん限られた時間での現場視察であります。「実は刈谷市にはない魅力的なバリアフリー対応がされている」という点を見のがしてしまった恐れもあります。刈谷市においては今後、刈谷駅北口側のアーバンフェイス事業、南口側の再開発と、刈谷駅周辺の事業が続きます。その際に、先の10項目を「刈谷市においても実際施行されているかどうか」を計るチェックリストとして使いたいと思います。

  3. 恵庭市 花のまちづくりプランについて

    先に東洋経済新報社が出した『全国の自治体の住み良さランキング』において、刈谷市は全国第6位、今回訪問した恵庭市は272位、しかしまちの景観を眺める限りでは、はるかに恵庭市のほうが「住みやすい」ように感じた。それはたぶん、今回の視察項目である『花のまちづくりプラン』に起因するところが大きいのだろうと思う。

    バスで市内を移動していても、まちのいたるところにある色彩鮮やかな花々で、心が晴れ晴れとしてくるのです。平成10年から始まったこの『花のまちづくりプラン』、そもそもなぜこのプランが出来たのか、それはニュータウンはいつか必ず老朽化して行くという課題に対抗するためでした。つまり、区画整理をしてニュータウンを形成しても、時の経過と共にニュータウンが老朽化し遂には寂れてしまう。この循環を防ぐための解決策として「美しく成熟して行く街」を目指すというものでした。

    したがって、「花」は目的ではなくあくまでも「手段」なのです。そのために、家庭・学校・公共施設・公園・道路・水辺・商店街・工業団地・農村・・・などまちのあらゆる所に花を植えて行くというものです。しかも最も驚くべき事としては、それらを行政がすべて仕事として担っているのではなく、市民の自主的な活動により賄われているという点です。とにかく「花を通したまちづくり」という考え方に対する市民の意識が非常に高いのです。そのため、自らの庭でのガーデニングや、商店街における店先へのプランター設置、空き地(市有地)を花の公園として整備してしまう取り組みなど、行政が行うのでなく、全てそこに住んでいる市民が手弁当で行っていました。

    「なぜ市民の意識がこれほど高いのか?」その疑問に対しては3つの理由を答えてくださいました。

    1. 恵庭市が花苗の産地であったこと。産地としての特性を十分生かすことができる。
    2. 花いっぱい文化協会(昭和36年設立、町内会・学校・商店街などが参加、地域住民による地域のための活動)の存在が大きい。
    3. 高い品質を求める地元市民と生産者との切磋琢磨により益々、市民の「花」に対する意識が高くなる。

    ということでありました。

    つまり、恵庭市において「花」を手段としてまちづくりを進める必然性があったのです。「都市の特徴(カラー)がない」と言われる刈谷市において、「花」を特徴としてまちづくりの進めることは非常に魅力的であると思いました。しかし、恵庭市のような「花」に対する必然性、市民の意識の高さのない本市においては、同じような手法で「花を使ったまちづくり」を進めることは難しいのだろうと思いました。

    唯一可能な方法としては、当日私の質問に対して答えてくださった恵庭市の職員の言われた「優良企業とのタイアップ」ということなのかもしれません。あるいは、刈谷市らしい必然的な要因を利用して、別の特徴(カラー)を出したまちづくりが本来は良いのかもしれません。でも、鮮やかな草花が咲き乱れ、あんな心癒されるまちに刈谷市をしてみたい・・・そんな思いも捨てきれません。この点は今後勉強して行きたいと思います。