文教委員会 視察研修所感

氏名 神谷昌宏

平成16年10月13日(水)〜15日(金)の3日間、文教委員会のメンバー7名と当局2名の合計9名で行政視察に行って参りました。

視察項目は

  1. 埼玉県狭山市 外国語早期教育推進特区
  2. 茨城県日立市 教科教室型中学校
  3. 茨城県牛久市 学校の2学期制

についてであります。

これらの事業は、現在刈谷市として実施をしてはいませんが、近隣の市町村で行うところも出てきており、刈谷市としてもその導入については今後十分検討してゆく必要があると考えています。

実際に行われている授業を参観したり、学校の校舎を隅々まで見学したりと、いずれの調査項目も非常に密度の濃い内容で行うことができました。以下、視察地ごとに報告します。

  1. 埼玉県狭山市 外国語早期教育推進特区について

小泉内閣の下、国において行われている『構造改革特別区域』の制度を利用して、市内の公立小学校における「英語活動」を教科として新設したものです。試行年度の昨年は市内7小学校において実施し、本年度は全小学校17校で行われていました。

概要は

実際に授業を観ての感想

  1. 茨城県日立市 教科教室型中学校について

「教科教室型」とは、あまり聞き慣れない名称ですが、全ての教科に専用の教室を設けて、授業ごとに生徒がその教室に移動して授業を受けるという方式です。この方式のメリットとしては・・・・

  1. 生徒自らが、時間割ごとに教室を移動することで、次の教科に対する心構えができ、自主性や主体性を伸ばすことができる
  2. 教科の専門性や特色を生かした学習環境づくりができる
  3. 教科専用教室のほか、さまざまなスペースを組み合わせたフレキシブルな学習を展開することができる
  4. 教科ごとに、図書資料やプリント、教育機器などを配置することができるため、多様な学習に対応することができる

ということです。

今回視察した日立市立駒王中学校は、既存校舎のままこの教科教室型の運営方式をスタートさせたわけではなく、旧校舎の老朽化により全面改築となり、その際この「教科教室型」の校舎にしたとのことでした。したがって、校舎の随所に「教科教室型」運営と一体となってよりよい学校運営がされるよう配慮が施されていました。

具体的には・・・

  1. 職員室をなくして、校務センターという名称にしている
  2. 教室と廊下の境がない→オープン
  3. 保健室の中に「カウンセリング室」や「温水シャワー」
  4. エレベーターの設置とバリアフリー
  5. 教室ごとに色遣いを変化させている
  6. 各教室は教科ごとに使用する時とクラスとして使用する時の使い分け
  7. ホームベース=クラスごとのスペース(ロッカー)
  8. 地域交流ホールは地域の皆さんが利用することができる

など、単に「教科ごとに違った教室で授業を行う」ということだけでなく、校舎の改築というきっかけを有効に生かして、生徒の教育環境の向上に最大限の配慮がされていました。

「教科教室型」で懸念されるデメリットとしては、「学級内の関係が希薄になるのではないか」といったことが挙げられますが、確かに授業ごとに教室は移動しますが、クラスの単位がバラバラになってしまうわけではないので、あまり心配する必要はないと感じました。

こういった「教科教室型」の学校運営は平成15年度末全国で42校が実施をしているとのことでした。そして、過去に実施をしたけれども結局元に戻してしまったところであるとか、そのために施設は整備したけれども実施に至っていないところなどがあるようです。

そういった意味では、単に施設を整えるだけでなく、子ども達と先生方が一緒になって考えてゆく運営がより大切であると感じました。一方、既存の校舎を使ってある年から「教科教室型」での運営をするのでなく、校舎を新たに建てるといったきっかけも必要であると感じました。

  1. 茨城県牛久市 学校の2学期制について

この「学校2学期制」というテーマについては、私自身もインターネットやレポートの中で取り上げ、皆様に様々なご意見を頂いていましたので、現に実施している先進市の生の声を聞くことができるということで大変楽しみにしていました。

目的や制度のしくみについては、現在豊田市で行われていたり、来年度から高浜市において行うものと同じでありました。すなわち、平成14年度に打ち出された新たな学習指導要領に謳われている「ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること」「各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること」を主な目的として、4月から10月の体育の日前までを1学期、それ以降を2学期にするというものです。

そして具体的に「ゆとり」を生み出すために・・・

  1. 教師の事務的な仕事量を軽減する
    • 2学期制により通知票を作る時間、行事の準備、会議などの見直しをする
  2. 学期を長いスパンにしてカリキュラムを調整できる時間的ゆとりを作る
    • 体験の充実などを目安に単元の重点化を図る
  3. 行事やテストの見直しをして授業時間を増やす
    • 2学期制によるテストの削減や7月と12月の学期末授業等を通して授業時間数を増やす
  4. 長期休業日を学びの連続としてとらえる
    • 行事を長期休業日に位置づける
    • 学校図書館を開放する
    • 総合的な学習の時間の相談日をもうける
  5. 長期休業日に教師が実質的な勤務ができるようにする
    • 児童生徒の学習や生活相談の設定
    • 長期休業日の児童生徒それぞれの課題の支援
    • 評価、評定の準備

などの取り組みを行っているとのことでした。これまで私が捉えていた2学期制の主な目的は上記の(3)でありました。しかしこれを実施したとしても、学校完全週5日制に伴う授業時間の不足を決して補えるものではありません。しかし、今回の説明の中で判ったことは、2学期制はむしろ上記の(4)(5)に意義があるということです。すなわち夏休みが、1学期が終わっての息抜きとしてのご褒美の期間ではなく、1学期の中に組み込まれて、夏休みにやったことが1学期の成績の中に反映される学びの連続時間として捉えられることです。しかし、そのことは本当に「子どもにとってよりよい制度か」という視点に立っているかというと少し疑問になります。なぜならば、担当者の説明の中でこういった発言がありました。「土曜日が休みになったことで、教師はこれまでのように夏休みに長期の休暇を代休として取ることができずに、夏休み期間中も出勤しなくてはならなくなった。そして、学校に出勤した以上価値ある仕事をしなければならない」つまり、教師の側の都合で「夏休みを学びの連続の場」にしようとしていないかという点です。

今回の視察で改めて強く感じたこと・・・学校2学期制の議論は、平成14年度から始まった学校完全週5日制により、「授業時間の不足→学力の低下」といった現象が背景にあると思います。その穴埋めを学校行事の削減や、夏休み中の中途半端な学びに求めるのではなく、たとえば月1回でも土曜日に半日だけ授業を行えば、年間48時間の授業時間数増加となります。そういった形での対処の方が子ども達にとっても教師にとっても無理がないと思います。私達の子ども時代、土曜日に半日で帰れることがどれくらい嬉しかったか・・・そんな話で文教委員を乗せた駅に向かうバスの中は盛り上がっていました。