視察研修所感

自民クラブ 神谷昌宏


平成16年7月8日(木)13:00〜17:00、(財)日本都市センター主催による『第6回 都市経営セミナー』を受講しました。テーマ「安全・安心都市の再生に向けた自治体の役割 〜生活犯罪・迷惑行為・暴力からまちを守る〜」ということで、自治体としての防犯対策の取り組みについて学んできました。

残念ながらここ数年刈谷市においても犯罪が急速に増加しています。平成15年度の刈谷市内における刑法犯の数は4609件、前年度に比べ実に38%もの増加となっています。平成6年度が2000件弱ですので、10年間で倍の犯罪件数となっています。

これまで、刈谷市を初めとしてほとんどの自治体において「防犯は警察の仕事」「犯人を捕まえるのは警察」という考え方が一般的で、犯罪の防止に対して積極的な取り組みが行われていなかったのではないかと思います。確かに、「犯人を捕まえるのは警察」ですが、犯罪のない安全で安心して暮らせるまちをつくることは、市民の生活基盤を預かる自治体の最も重要な責務であると思います。従って、これまで積極的に取り組んできた防災と合わせて防犯を視野に入れた施策が今後は必要であると思います。

平成16年度当初予算において刈谷市は、防犯対策の一環として「防犯灯・水銀灯を積極的に設置する」ということで、防犯灯については本年度500基、水銀灯については170基の設置を目標とした予算計上をしています。そのほか、各地域の皆様が自主的に活動される『地域防犯パトロール隊』に対しても助成を行っています。しかし、「その次の対策は? と問われた時になかなか良い方法が思い浮かびません。これらの他に自治体として取り組むことのできる防犯対策はないだろうか?」そのヒントを求めて今回のセミナーに参加しました。

各講師が話された「防犯灯・パトロール隊に続く防犯対策としての次の一手」の内容を要約してみますと・・・・

@安全安心まちづくりカレッジの開校

一致団結して犯罪に立ち向かう環境を醸成し、地域の防犯リーダーを養成することを目的にいわば「市民安全大学」が開校されていました。

A 防犯に対するガイドブックの作製

住民全てが防犯意識を共有し、それを実践するためのガイドブックを作製していました。大変判りやすい25ページに渡る防犯マニュアル集です。

B防犯に対する自治体連合

1つの自治体で犯罪が減ったら、その分隣の自治体での犯罪件数が増えていたということがあったそうです。1つの自治体だけでそのまちの安全だけを考えるのではなく、知識と情報、学習や人材の交流による自治体間の連携が必要です。

Cスーパー防犯灯(防犯カメラ)は有効

プライバシーとの問題はありますが、スーパー防犯灯は有効であるとのことです。但し非常に高価であるため、もう少し普及して安くなる必要があります

Dよりよい地域社会の構築

これまでの防犯活動はパトロールなど直接的なものが主であり、行政も市民ボランティアを支援することが主目的であると考えているとのことです。(確かに、現在の刈谷市の防犯施策もこの領域にあります)しかし、本来の市民・行政の防犯活動は警察の補助ではなく「よりよい地域社会の構築」にあり、物的環境整備(注)を含め、防犯に無関係な諸活動との連携こそ重要であるとのことでした。

注)「物的環境整備」とは、基幹都市施設としての道路・公園・住宅の整備が犯罪の基本的な対策になるという考え方です。ニューヨークの犯罪減少の秘密は『割れ窓理論』にあったとのことです。「一枚の割れたガラス窓を放置しておくと、たちまち街全体が荒れ、犯罪が増加する」という理論を、1982年にアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱しました。この考え方から、まちの施設を整備することは防犯対策の有効な手だてであると思います。

E安心・安全条例が本当に機能しているか?

地域の状況に無関係の画一的なものになっていないか。犯罪者の視点は20mの距離(4軒で1箇所)=これがコミュニティーの原点であり、その単位ごとの条例がむしろ必要なのではないか。


これらの提案については、@Aのように直ぐにでも具体化できそうな事柄もあれば、BCのように他の自治体と協力しなければ出来ないこともあり、またDEのように「観念論的には判るのだが、その実現に向けた具体策は」と問われた時に、返事が出来ないような難しい事柄もあります。しかし今回の研修を通して、防犯対策が市民の生命と財産を守るべき行政に課せられた最も重要な施策と捉え、その具体的対策の実現に向け一人の市議会議員として知恵を絞ってゆこうと改めて決意しています。